北海道を代表するフォークシンガーで、数々の名曲を世に送り出している松山千春氏の出身地「足寄町」の中心街から東に向かうと ラワンブキ(螺湾蕗)の産地である螺湾地区にたどり着きます。
ここを流れる螺湾川に沿って自生するラワンブキは、北海道遺産の指定を受け 高さ2〜3mに達するケタ違いに巨大なフキでありますが、なぜそれほどまでに大きくなるのかは未だに解明されていません。
自生している天然物のラワンブキを食用として収穫することもありますが、現在では 農業者によるラワンブキ生産がほとんどを占め、より安定した品質と供給量で 市場に広く出回るようになっています。
さらに、足寄町オリジナルのブランド品にすべく 産官学一体となった商品開発が進められ 道内 はもとより道外での知名度も徐々に高まってきています。
ラワンブキはキク科フキ属の多年草であるフキの変種で エゾブキ、オオブキとも呼ばれるアキタブキ(秋田蕗)の一種とされていますが、逆にラワンブキから分化したのがアキタブキであるという説もあります。
国内における フキの品種別生産量では愛知早生フキ(あいちわせふき)が最も多く、みずみずしくやわらかい食感が特徴で 市場に出回っているフキの約60%がこの愛知早生フキであります。
その他、京都や奈良を中心に栽培されている 香り高さややわらかさが特長の 水フキ(京フキ)、山蕗(やまブキ)もありますが 収穫量はごくわずかで、多くの人が日頃から食べているのは愛知早生フキが主流のようです。
それら全国区の一般的に出回っているフキに比べて 北海道が誇るラワンブキは 兎にも角にもサイズのスケールが格段に違い 樹木並みに伸びる高さはもちろんのこと、茎の直径が10cm、葉の直径は1mにも達するほどビッグであります。
かつては その高さが住宅並みの4mにも及ぶほどで その規格外の大きさから 馬に乗ったままその下をくぐることもできたと言い伝えられたり、「コロボックル」と称された 小人たちの伝説も生まれています。
「コロポックル」とはアイヌ語で「ふきの葉の下の人」という意味であり 雨降りの時ラワンブキの葉の下で雨宿りしていたとされていて そこに10人くらいは入ってしまうほど小さい 妖精的なほのぼの系のキャラクターであります。
が、実際には諸説あり アイヌ民族と友好的に暮らしていたとする童話的なほっこりする物語から 差別的な思惑を含む悲哀に溢れた アイヌ民族と対立する物語まであり、「コロポックル」伝説の真実は迷宮入り状態になっています。
ちなみに、ラワンブキの名称は「JAあしょろ」の登録商標であり ブランド維持のため、種苗の持ち出しは禁止されています。
厳密に言うと 自生するフキは同じ品種であってもラワンブキという名称のフキではないということになります。
ラワンブキは 見た目の太さに加え 繊維分の多さから、固そうなイメージを持たれやすいのですが、実際はそこそこ柔らかく 心地よい噛み応えの風味豊かな野菜および山菜であり、普通のフキよりもカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を豊富に含んだ、より体に良い健康食材であります。
旬は6月上旬〜7月上旬くらいで<、意外とアクが少なくシャキシャキ感もちょうど良いい感じで、風味も抜群です。
煮物や炒め物など、幅広い料理でその美味しさを発揮してくれますが、生のラワンブキをそのまま使う事はほとんど無く 下処理として塩を加えて茹でた「ゆでぶき」にしてから各料理に使うのが一般的であります。
<ゆでぶきの作り方>
・材料
生ラワンブキ、塩
・作り方
@ ふきを適当な大きさに切る。
A 鍋にお湯を沸かし、塩をひとつまみ入れ、ふきを入れて茹でる。
B ふきの太さにもよるが、5〜10分程度、固めに茹でる。
C 茹であがったら水にとって、皮をむく。
ゆでぶきさえ作っておけば いつでもサッと取り出して あらゆる調理法で簡単にラワンブキを味わうことが出来ます。
ラワンブキは サイズがただ大きいだけで 味に関しては他のフキとそれほど大差ないように思う方がいるかもしれませんが、肉厚だからこその食感の良さと、口の中に広がる豊かな風味はひと味もふた味も違い 食べ比べてみればよく分かると思います。
煮物、おでん、炒め物など、定番料理はもちろんのこと、天ぷらにしても美味しいですし、浅漬けなどの漬け物にして 素材感タップリに味わうことも出来ます。
未開の地が多い道東の中でも螺湾地区は特に原生林などが多く、近くにある神秘的な湖沼「オンネトー」に象徴されるように 当然のごとく水がキレイであり、かつ 土壌が肥沃な事が、大きく育つラワンブキが生まれた要因になったと思われます。
でっかい北海道を象徴するような出で立ちで、大地の豊かな自然を感じさせるラワンブキは、カニ、イクラ、ジンギスカン、アスパラなど 北海道の代表的な名産品に比べると 道外での知名度などはいささか低く やや地味な存在なのかもしれませんが、北海道民、特に道東の人たちにとっては とっても身近な”B級グルメ”であります。
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