ここらでそろそろ我が北海道が誇る”B級グルメの中のB級グルメ” ザンギについて取り上げておこうと思います。
子供からお年寄りまで、はたまた男性も女性も、さらには漁師も農家も公務員も、もっと言うと市民も町民も村民も、北海道に住む誰もが大好きな「ご当地グルメ」がザンギなのであります。
ご飯のおかずから酒やビールのおつまみとして、弁当の一品としても最適ですし、時には子供のおやつ、パンに挟む具材としても使われ、あらゆる場面で大活躍の絶品肉料理であります。
ただし、このザンギに関しては その発祥からこれまでの歩み、味付け方法など、いずれについても確かな定義が無く、通常は鶏肉で作るものなのですが、他の素材のから揚げにもザンギの名称が付いたりして、本音を言うと、ザンギとはいかなるものかを自信を持って語ることができず、長々と敬遠してきた題材であります。
昔から良く聞いていた「鶏の唐揚げとザンギは同じもの」と言う通説に 「ザンギという呼び名は北海道特有の方言だったんだぁ〜」と勝手に解釈し、一時期は疑うことなく完全に納得していました。
しかし、居酒屋 食堂 レストラン 精肉店 惣菜店 弁当店 冷凍食品 スーパー コンビニ 給食・・・
道内のあらゆるところにザンギが必ずあって 普段から頻繁に食べていますが、どう考えても同じ味とは思えず 感覚的に「やっぱり鶏の唐揚げとザンギは別モノである」という結論に達しています。
全国共通の一般的な「鶏の唐揚げ」と北海道の「ザンギ」の違いを具体的に説明すると、「鶏の唐揚げ」は肉に塩味をつけて揚げた物で、製粉メーカーから出されている「から揚げ粉」に見られるように 鶏肉の表面に薄く衣が付いている揚げ物であり、対してザンギは鶏肉と衣にシッカリと醤油ダレを浸み込ませた、衣の厚さもそこそこにある揚げ物で、似通ったモノではありますが道産子としては「鶏の唐揚げ」と一緒くたにはして欲しくないところであります。
ただし、肉などを醤油とみりんから作ったタレに漬け込んで下味をつけ、片栗粉のみで揚げる「竜田揚げ」には少し近いような気もしており、もしかするとザンギとの関係性がなにがしかあるのかもしれません。
ひと昔前に 某居酒屋で見た 「骨なしザンギ」というメニュー名から考えると、推測ですが「骨付き状態」のものがもともとの正式なザンギなのではなかろうかと思います。
が、現在では「骨付きザンギ」の方が珍しくなっており、食べやすさからなのか「骨なしザンギ」スタイルが一般的で、お店のメニュー名にザンギとあれば、大半が「骨なし」です。
作り方も多種多様で、これと言った絶対的調理法はないのですが
「醤油・ショウガ・ニンニク・酒などを合わせたタレに鶏肉を漬け込み小麦粉や片栗粉をまぶして油で揚げる」
と、基本的な作り方を”超カンタン”に説明するとこうなりますが、タレの配分もマチマチで、揚げ粉も両方のブレンドだったり どちらか一方だけだったり、卵を加えてみたり、はたまた鶏肉の部位もモモ肉かムネ肉かその他の部位まで使うのか、さらに醤油味ではない「塩味ザンギ」なるものも登場しちゃったりして・・・
どれもそれぞれの個性で美味しいのですが、完全に好みの問題であり、ひとつに絞って紹介することは出来ません。
とりあえず我が家のザンギレシピ (あくまでも参考例ということで)
醤油・ショウガ・ニンニク・酒を合わせたタレに、切り分けた鶏モモ肉をポリ袋で30分くらい漬け込み、そこに小麦粉と片栗粉のブレンドを揉み込んで、サラダ油で揚げて出来上がりです。 |
以前に取り上げたベル食品 ザンギ名人で作る時もあり、我が家の味に近いザンギが出来上がりますが、なんとなくベル的な味付けの要素が強いので、チョット違う別バージョンのザンギとして捉えています。
ザンギという名前の由来については様々な説があり、中国語で鶏の唐揚げを意味する「炸鶏(ザーチー)」が転じて定着したという説が有力とされていますが、他に ざんぎり頭の「散切り」からとられたという説、肉を細かく切ることから付けられた愛媛の郷土料理の「千斬切(せんざんき)」からきたと言う説、ある店が「ザーギー」として出す際に運が付くように「ん」を加えたという説など・・・今や北海道の食文化の枠からはみ出し始めているその三文字に、収拾が付かないほどいろいろな由来が語られていますが、正解は不明であります。
ザンギ自体の発祥についても定かではなく、釧路市の焼き鳥店「鳥松」と函館市の「陶陶亭」のどちらかがメニューとして初めて出したとされていて、同じ北海道ではあるものの、距離的に離れていますし、土地柄的にも違いますので、残念ながらここでも結論付けることが出来ません。
ただし、全国的にザンギが知られるようになったきっかけは、札幌の琴似から全国へと羽ばたいた”居酒屋 つぼ八”がイチオシのメニューとして、店舗展開とともにその存在を広めたような気がしています。
北海道ではいろいろな素材の唐揚げをザンギを加えた名称で呼ぶことがあり、「たこザンギ」は北海道ですっかり定着していますが、他にもジンギスカンでお馴染みのラム肉で作る「ラムザンギ」、豚肉で作れば「豚ザンギ」、鮭なら「さけザンギ」・・・
と言った具合に、どんな食材でも、唐揚げにするとザンギの文字が付けられることが多くなって来ています。
おそらく、「唐揚げ」というワードよりも「ザンギ」の方が道民の反応が良く、北海道におけるビジネス的な面から現れ始めた傾向なのでしょう。
それほど道民の中で「ザンギ=なまらうまい」の公式が完全成立していて、その事がメーカーや販売者などの各方面で広く認知され、常識化している証拠であります。
特に揚げたてアツアツのザンギは最高で、衣をサクッと噛むと中からジューシーな肉汁が醤油ダレの風味とともに溢れだし、そこに鶏肉自体の旨みが加わって口いっぱいに広がり、次々に手が伸びて止まらなくなります。
と言いつつ、冷めても鶏肉と衣にシッカリと醤油ダレの味が付いているおかげで、それなりのレベルで美味しく食べられますし、サクッと感は期待できませんが、お弁当にはもってこいの一品です。
某フライドチキンを想像するだけで無性に食べたくなると言う人は多いでしょうが、同様にザンギと聞けば条件反射で無性に食べたくなるのが北海道民であり、生まれてこの方「ザンギが嫌い」と言う道産子には会ったことがありません。
まさに「北海道が生んだB級グルメの象徴」であり、絶対に「鶏の唐揚げ」と同じものではありませんので、多くの人に食べ比べてその違いを確かめて欲しい「道民のソウルフード」がザンギなのであります。
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